📝 この記事について:本記事の内容は、国税庁の公式サイトに2026年9月22日時点で掲載されている情報(同日、国税庁「令和8年度税制改正特集」で全項目を再確認済み)にもとづいています。税務の取扱いは個別の事情によって変わります。本記事は一般的な情報の整理であり、個別の判断については必ず顧問税理士・所轄の税務署にご確認ください。
インボイス制度が始まったときに設けられた「2割特例」(免税事業者からインボイス発行事業者になった小規模事業者向けの負担軽減措置)は、2026年9月30日で終了します。期限が近づいてきたので、終了時期と終了後の選択肢を、国税庁の一次情報で確認しておきます。
2割特例とは(前提の確認)
2割特例は、免税事業者からインボイス発行事業者になった小規模事業者について、消費税の納税額を「売上税額の2割」に軽減できる措置です。事前の届出は不要で、確定申告書に付記するだけで適用できます。
いつまで使えるか(事実・国税庁一次情報)
国税庁の資料によると、2割特例が適用できる期間は「令和5年(2023年)10月1日から令和8年(2026年)9月30日までの日の属する各課税期間」です。具体的には次のようになります。
- インボイス発行事業者の登録を2023年10月1日から受けた個人事業者:2023年分(10〜12月)の申告から2026年分の申告までの計4回の申告が対象
- 3月決算で2023年10月1日から登録を受けた法人:2023年10月〜2024年3月分の申告から2026年分の申告までの計4回の申告が対象
決算期によって「令和8年9月30日を含む課税期間」がいつになるかが変わるため、自社・自分の場合がどの申告回まで対象になるかは、決算月から逆算して確認する必要があります。
出典:国税庁「2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要」
終了後はどうなるか(簡易課税 or 原則課税)
2割特例が使えなくなった後は、「簡易課税」か「原則課税(本則課税)」のどちらかで消費税を計算することになります。ここで一次情報として押さえておきたいのが、簡易課税への切り替えに関する届出タイミングの特例です。
通常、簡易課税を選ぶには、適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があります。ただし令和8年度税制改正で、この提出期限に特例が設けられました。2割特例(後述の3割特例も同様)の適用を受けた課税期間の翌課税期間については、その課税期間に係る確定申告期限までに届出書を提出すれば、その課税期間から簡易課税を適用できます。
国税庁は12月決算法人の例を挙げています。令和8年12月期を2割特例で申告した法人が、令和9年12月期から簡易課税を使いたい場合、届出書の提出期限は令和9年12月期の確定申告期限である令和10年2月29日になります。つまり「2026年9月30日までに決めないと手遅れ」という話ではなく、実際にはもう少し考える時間があるということです。
この提出期限の特例は、翌課税期間が令和8年10月1日以後に終了する場合に適用されます。また簡易課税は、いったん選択すると原則として2年間は継続して適用しなければならない点にも注意が必要です。どちらが有利かは課税売上高・業種区分(みなし仕入率)・実際の課税仕入れの多さで変わるため、判断は顧問税理士に相談してください。
出典:国税庁「令和8年度税制改正特集(インボイス経過措置の見直し等)」
【重要】3割特例は個人事業者だけ。法人は使えない
令和8年度税制改正で、2割特例の後継にあたる「3割特例」が新設されました。納付税額を売上税額の3割にできる特例で、対象は令和9年分・令和10年分の消費税申告です。
ただし、ここが見落とされやすいところです。3割特例を使えるのは個人事業者だけで、法人は適用対象外とされています。国税庁のQ&Aでも、適用を受けられない者として「法人」が明記されています。
- 個人事業者:2割特例が終わったあと、令和9年分・令和10年分は3割特例が使える(=あと2年の猶予がある)
- 法人:3割特例はない。2割特例が終わった次の課税期間から、簡易課税か原則課税かを選ぶことになる
3割特例のその他の主な要件は、基準期間(適用を受ける年の2年前)の課税売上高が1,000万円以下であること、インボイス発行事業者の登録を受けていること、免税事業者がインボイス登録等により課税事業者となった課税期間であること、です。適用を受ける場合は確定申告書にその旨を付記する必要があります。
「2割特例が終わっても3割特例があるから大丈夫」という理解は、法人には当てはまりません。法人成りしている一人社長は、ここを取り違えないようにしてください。
もうひとつの変更点:免税事業者からの仕入れは2026年10月から控除70%に
自分が2割特例を使っているかどうかとは別に、免税事業者など「インボイス発行事業者ではない相手」から仕入れをしている場合にも、2026年10月から変更があります。
インボイス発行事業者以外からの課税仕入れについて一定割合を控除できる経過措置は、これまで「80%控除が2026年9月まで、その後は控除なし」という予定でした。これが令和8年度税制改正で適用期限が2年延長され、控除割合も段階的に下げる形に見直されました。
| 期間 | 控除できる割合 |
|---|---|
| 〜2026年9月 | 80% |
| 2026年10月〜2028年9月 | 70% |
| 2028年10月〜2030年9月 | 50% |
| 2030年10月〜2031年9月 | 30% |
| 2031年10月〜 | 0%(控除不可) |
この経過措置の詳細(帳簿への記載方法や、新設された1億円の上限など)は、免税事業者からの仕入れ、2026年10月から控除80%→70%に縮小でまとめています。
改正前の予定(2026年10月以降は控除なし)と比べると緩和ですが、それでも2026年10月1日から80%が70%に下がることに変わりはありません。インボイス未登録の外注先・仕入先がいる場合は、10月以降のコストが少し増えます。会計ソフトの経過措置の税区分が新しい割合に対応しているかも、10月に入って最初の記帳のときに確認しておくと安心です。
あわせて控除限度額も見直され、一のインボイス発行事業者以外の者からの課税仕入れの合計額(税込)が、その年または事業年度で1億円(改正前は10億円)を超える場合、超えた部分にはこの経過措置を適用できないこととされました(令和8年10月1日以後に開始する課税期間から適用)。小さな会社であれば通常は関係しない規模の話です。
うちの場合(現時点でのメモ)
この記事を書いている時点で、自社の決算期が「2026年9月30日を含む課税期間」に該当するかどうか、簡易課税と原則課税のどちらを選ぶべきかは、まだ顧問税理士に確認している最中です。判断が固まったら、実際にどう選んだか・その理由を改めて記事にする予定です。
まとめ
2割特例は令和8年9月30日を含む課税期間までで終了します。その先は、個人事業者なら令和9年分・令和10年分は3割特例が使えますが、法人は3割特例の対象外で、簡易課税か原則課税かを選ぶことになります。
ただし簡易課税の届出期限には特例があり、2割特例を適用した課税期間の翌課税期間については、その確定申告期限までに届出書を出せば間に合います。9月30日が絶対の締切というわけではないので、慌てて決める必要はありません。まずは決算期を基準に「自分がいつまで2割特例の対象か」「その翌期の確定申告期限はいつか」を確認し、そのうえで顧問税理士に相談するのが安全です。
あわせて、インボイス未登録の相手からの仕入れがある場合は、2026年10月から控除割合が80%→70%に下がる点もチェックしておいてください。

