📝 この記事について:本記事は電子帳簿保存法の一般的な制度概要をまとめたものです。制度の適用は事業の状況によって異なるため、具体的な対応は顧問税理士など専門家にご確認ください。2026年9月時点の情報にもとづいています。
「電子帳簿保存法」という言葉は聞いたことがあっても、「結局、自分の会社は何をすればいいのか」がはっきりしないまま放置している一人社長・小さな会社は少なくないはずです。実は、この制度の一部(電子取引データの保存)はすでに完全義務化されており、「知らなかった」では済まされない状態になっています。今回は、今さら聞けない基本と、今すぐ確認すべきポイントをまとめました。
電子帳簿保存法には3つの区分がある
電子帳簿保存法は、大きく3つの区分に分かれています。混同しやすいので、まず整理しておきます。
| 区分 | 内容 | 義務かどうか |
|---|---|---|
| 電子帳簿等保存 | 会計ソフトで作成した帳簿・書類をデータのまま保存する | 任意(したい人だけでよい) |
| スキャナ保存 | 紙で受け取った請求書・領収書等をスキャンしてデータ保存する | 任意(したい人だけでよい) |
| 電子取引データ保存 | メール添付やクラウドサービス経由など、最初からデータでやり取りした取引情報を、データのまま保存する | 義務(原則すべての法人・個人事業主が対象) |
つまり、「紙の書類を電子化する」部分は任意ですが、「最初からデータで受け取った請求書・領収書等をデータのまま保存する」部分は、規模を問わずすべての事業者に義務付けられています。ここを混同していると、対応が遅れがちです。
「電子取引データ保存」はすでに完全義務化されている
2023年末までは、電子データを紙に印刷して保存することを認める猶予措置(宥恕措置)がありましたが、これは終了しています。2024年1月1日以降、メールで受け取った請求書のPDFや、ネットショップの領収書データなど「電子的にやり取りした取引情報」は、紙に印刷するのではなく、データのまま一定のルールに沿って保存することが必須です。
なお、2024年1月1日以降も「相当の理由」があると税務署長が認め、税務調査等の際にそのデータと出力書面の両方を提示・提出できるようにしている場合に限り、検索機能などの保存要件を満たさない形での保存が例外的に許容される規定があります(国税庁「電子帳簿保存法一問一答」問83〜87参照)。ただしこれは個別に税務署の判断が必要な限定的な救済措置であり、「誰でも使える猶予」ではありません。電子データ自体の保存(紙への出力だけで済ませないこと)が原則である点は変わらないため、まずはデータ保存の仕組みを整えることを基本に考えるのが安全です。
データ保存の基本要件
- 真実性の確保:改ざん防止のための措置(タイムスタンプの付与、訂正・削除の履歴が残るシステムの利用、事務処理規程の整備のいずれか)
- 可視性の確保:「日付」「金額」「取引先」で検索できる状態にしておくこと。ただし、次のいずれかに当てはまり、かつ税務調査等の際にデータの「ダウンロードの求め」に応じられる場合は、検索要件そのものが不要になります(国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」問45・問46)。
①基準期間(法人は前々事業年度、個人事業者は前々年)の売上高が5,000万円以下
②電子データをプリントアウトした書面を、取引年月日・取引先ごとに整理して提示・提出できる状態にしている
ここで不要になるのはあくまで「検索できる状態にする義務」であり、電子取引データそのものを保存する義務は残ります。紙に印刷して原本を保存すれば電子データを削除してよい、という意味ではありません。また、税務調査などでダウンロードを求められた際に応じられない場合は、この検索要件の不要措置自体が適用されなくなる点にも注意が必要です。 - 保存先はパソコンやクラウドサービス、専用システムなど、法律で定められた特定の形式は指定されていません
一人社長・小さな会社が今すぐ確認したいチェックリスト
- メールで届いた請求書・領収書のPDFを、印刷して紙で保存していないか
- ネットショップやサブスクサービスの利用明細・領収書をデータのまま保存できているか
- 保存したデータを「日付・金額・取引先」で検索できる状態にしているか(ファイル名の統一やクラウド会計への取り込みなど)
- 改ざん防止のための措置(タイムスタンプ、訂正削除履歴が残るシステム、事務処理規程のいずれか)を何かしら講じているか
- 紙で受け取った請求書・領収書は、これまで通り紙のまま保存していても問題ない(スキャナ保存は任意)と理解できているか
- 自社(前々事業年度)の売上高が5,000万円以下で、税務調査の際にデータをすぐ提出できる状態にしてあるか(該当すれば検索要件は不要になるが、電子データの保存義務自体は残る点に注意)
対応方法:クラウド会計・クラウド請求書サービスの活用
一人社長・小さな会社が個別にルールを整備するよりも、クラウド会計ソフトやクラウド請求書サービスを使い、取引データを自動的に取り込んで保存する仕組みにしてしまうほうが現実的です。多くのクラウド会計ソフトは、電子帳簿保存法の検索要件・改ざん防止要件に対応した保存機能を備えています。
クラウド会計ソフトの選び方は、クラウド会計ソフト比較記事でも詳しくまとめています。
まとめ
電子帳簿保存法のうち「電子取引データ保存」は、規模を問わずすべての事業者に義務付けられており、猶予措置もすでに終了しています。まずは自社が「メールやクラウドサービスで受け取ったデータを紙に印刷して保存していないか」を確認し、必要であればクラウド会計ソフトなどを使ってデータ保存の仕組みを整えることから始めてみてください。
出典
・電子帳簿保存法関係(国税庁)
・電子帳簿保存法一問一答(国税庁)
・電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】令和6年6月版(国税庁) 問45・問46(検索要件不要の2条件、ダウンロードの求めへの対応)

