経営者の保険選び方|生命保険・就業不能保険と節税効果の実態

経営・起業

📝 この記事について:保険の税務ルールは頻繁に改正されるため、実際の加入・見直しにあたっては税理士や保険の専門家に必ず確認してください。特定の保険商品を推奨するものではありません。

法人を作ってから「保険はどうしていますか」と聞かれることが増えました。正直、個人事業主の頃は保険についてほとんど考えていませんでしたが、法人成りしてから、経営者に必要な保険は会社員時代とはまったく違うと実感するようになりました。この記事では、経営者が検討すべき保険の種類と、よく言われる「節税効果」の実態を整理します。

結論:法人保険の「節税」は税の繰延べ。本当に大事なのは保障そのもの

先に結論から言うと、法人保険で「節税」という言葉が使われることが多いですが、正確には課税の繰り延べであって、税金が消えるわけではありません。2019年の国税庁通達改正により、以前のような「保険料を全額損金にできる」というシンプルな節税策はほぼ使えなくなりました。保険は節税目的ではなく、経営者に何かあったときに事業と家計を守るための保障として検討するのが実態に合っています。

法人保険の損金算入ルール(2019年改正後)

2019年6月の国税庁通達改正により、定期保険・第三分野保険の損金算入割合は「最高解約返戻率」に応じて厳格に決められるようになりました。ざっくり言うと、解約時に戻ってくるお金(解約返戻金)の割合が高い保険ほど、損金にできる割合が下がる仕組みです。

  • 最高解約返戻率50%以下:支払保険料の全額を損金算入可能
  • 最高解約返戻率50%超70%以下:保険期間前半4割は保険料の60%のみ損金算入
  • 最高解約返戻率70%超:さらに損金算入割合が制限される

つまり、「解約返戻金が多く戻ってくる貯蓄性の高い保険=節税効果が高い」という以前の発想は、今はほぼ通用しません。加入を検討する際は、保険会社の営業トークだけでなく、実際の損金算入割合を確認することが欠かせません。

経営者に必要な保険の種類

節税効果を過度に期待するより、まず考えるべきは「経営者に何かあったときに事業が止まらないか」という保障の視点です。代表的なものを整理します。

死亡保障(定期保険・終身保険)
経営者が万が一の場合、会社の借入金の連帯保証や、事業継続のための当面の運転資金をカバーする目的で検討されます。銀行借入がある場合、団体信用生命保険が付いていないケースも多いため、別途の死亡保障が必要になることがあります。

就業不能保険・所得補償保険
病気やケガで働けなくなったときの収入を補う保険です。生命保険会社が扱うものが「就業不能保険」、損害保険会社が扱うものが「所得補償保険」と呼ばれ、保障内容は似ていますが保険金額の上限や保障期間の設定方法が異なります。一人社長や専門職で代替の働き手がいない場合、この保障の重要性は特に高くなります。

個人事業主と法人役員で「働けなくなったときの備え」が違う

ここは法人成りする前に知っておきたかったポイントです。個人事業主(国民健康保険)には傷病手当金の制度がなく、働けなくなっても公的な収入保障はほぼありません。障害状態と認定された場合も、支給されるのは障害基礎年金のみで、会社員や法人役員が加入する厚生年金の障害厚生年金は受け取れません。

一方、法人の役員として社会保険(協会けんぽ・厚生年金)に加入していれば、病気やケガで働けない期間について傷病手当金を受け取れる可能性があります(以前の記事「法人成り後の社会保険料、実際いくら増えたか」でも触れましたが、社会保険料の負担増にはこうした保障の対価という側面もあります)。とはいえ、傷病手当金だけでは生活費・事業運転資金として十分でないことが多く、民間の就業不能保険で上乗せを検討する経営者が多いのが実情です。

実際にどう選ぶか

保険選びで失敗しないために、僕自身が意識している判断基準は次の3つです。

  • 「節税になるから」を主目的にしない:損金算入割合のルールが複雑になった今、節税目的での加入はメリットが薄い。まず保障の必要性から考える。
  • 借入金の額と保障額を照らし合わせる:連帯保証している借入がある場合、その金額をカバーできる死亡保障があるかを確認する。
  • 就業不能時の資金繰りをシミュレーションする:自分が3ヶ月・6ヶ月働けなくなったら会社の資金はどれだけ持つかを試算し、不足分を保険で埋める発想で選ぶ。

よくある質問(Q&A)

Q. 法人保険に入れば節税になると聞いたのですが、間違いですか?
A. 完全な間違いではありませんが、正確には「税の繰延べ」効果が中心です。2019年の改正以降、以前のような大きな節税効果は期待しにくくなっています。

Q. 個人事業主と法人、どちらの方が保険の必要性が高いですか?
A. 傷病手当金がない分、個人事業主の方が就業不能時の公的保障が薄く、民間保険での備えの重要性は個人事業主の方が高いと言えます。

まとめ

法人保険は「節税」ではなく「保障」を軸に考えるのが今の実態に合っています。特に就業不能・所得補償の保険は、個人事業主にとっても法人役員にとっても、公的保障だけではカバーしきれない部分を埋める重要な選択肢です。加入前に必ず損金算入ルールと保障内容を専門家に確認することをおすすめします。

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れん

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