📅 この記事は2026年7月時点の情報に基づいています。株価・為替・金利などの数値はその後変動している可能性があるため、最新の数値は日本銀行・各証券会社・報道機関等の公式情報でご確認ください。
📋 この記事でわかること
- 2026年10月から「106万円の壁」が撤廃されて何が変わるのか
- 週20時間が新たな社会保険加入の判断基準になる仕組み
- 副業・ダブルワーカーが加入対象になる条件と手取りへの影響額
- 10月までに確認すべき3つのアクション
2026年10月、「106万円の壁」が消える
「年収を106万円以内に抑えている」「週の勤務時間を20時間以内に収めている」——そんな調整をしている人は、今すぐこの記事を読んでほしい。
2026年10月1日から、社会保険の適用ルールが大きく変わる。これまで「月収8.8万円以上(年収約106万円)」が社会保険加入の収入ラインだったが、この月収要件が撤廃される。新しい判断基準は「週20時間以上の勤務かどうか」だけになる。
厚生労働省の試算では、今回の改正で新たに約200万人が社会保険の加入対象になると見込まれている。パート・アルバイト・副業ワーカーの多くが該当しうる、10年に一度レベルの制度変更だ。
この記事ではとくに「副業をしている会社員」「本業で社保に入っていない人」「複数の仕事を掛け持ちしているフリーランス」に向けて、変更内容と具体的な対応策を解説する。
そもそも社会保険の「壁」とは何か
社会保険(健康保険+厚生年金)の加入は、これまで以下の条件をすべて満たす必要があった。
| 条件 | 2026年9月末まで | 2026年10月以降 |
|---|---|---|
| 週所定労働時間 | 20時間以上 | 20時間以上(変わらず) |
| 月収要件 | 月8.8万円以上(年収約106万円) | 撤廃 |
| 勤務期間 | 2ヶ月超見込み | 2ヶ月超見込み(変わらず) |
| 企業規模 | 従業員51人以上 | 51人以上(段階的に拡大) |
| 学生 | 適用除外 | 適用除外(変わらず) |
つまり、今まで「月収8.8万円未満に抑えれば社保加入しなくていい」という抜け穴があったが、10月以降はそれが使えなくなる。週20時間以上働いていれば、収入額に関係なく社会保険の加入対象になる。
なお「130万円の壁」は、扶養に入れるかどうかの話(家族の健康保険の被扶養者になれるライン)であり、今回の改正とは別の話だ。混同しやすいので注意が必要だ。
副業・ダブルワーカーへの具体的な影響
ケース①:本業で社保加入済みの会社員が副業でパートをしている場合
本業の会社で社会保険に入っている人が、副業先でも週20時間以上働いている場合、副業先でも社会保険に加入する必要が生じる可能性がある。
ただし、この場合は「二重加入」ではなく、両社の報酬を合算して保険料を按分する「二以上事業所勤務届」の手続きが必要になる。副業先での保険料負担が発生し、手取りが減る。
副業での月収が仮に5万円だった場合、社保加入で月に約7,500〜9,000円程度(健康保険+厚生年金)の保険料負担が生じる。年間で9〜11万円の手取り減だ。
ケース②:本業が社保未加入のフリーランス・個人事業主の場合
個人事業主・フリーランスはそもそも社会保険(厚生年金・健康保険)の対象外だ。国民健康保険と国民年金に加入している。
副業先が法人で、そこで週20時間以上働いているなら、今回の改正で副業先での社会保険加入対象となりうる。この場合、副業先では厚生年金・健康保険を折半で払うことになり、国民健康保険・国民年金との関係を整理する必要が出てくる。
ケース③:パート・アルバイトで収入を106万円未満に意図的に抑えていた人
このケースが最も直撃するグループだ。月収7〜8万円に抑えて週20〜25時間働いていた人は、10月以降は月収に関係なく社会保険の加入対象になる。
月収7万円・社保加入の場合の手取り変化(51人以上の会社):
| 項目 | 改正前 | 2026年10月以降 |
|---|---|---|
| 月収(額面) | 70,000円 | 70,000円 |
| 健康保険料(約5%) | 0円 | ▲3,500円 |
| 厚生年金保険料(約9.15%) | 0円 | ▲6,405円 |
| 手取り | 約69,000円 | 約59,000円 |
| 年間手取り差 | - | ▲約12万円 |
手取りが月1万円以上減る計算だ。「扶養を外れたくない」という理由で収入を抑えてきた人には、かなり大きな影響だ。
「じゃあ損するだけ?」——社保加入のメリットも正直に話す
社会保険加入=デメリットだけではない。厚生年金に加入することで、将来受け取る年金額が増える。また、健康保険は傷病手当金(病気・ケガで働けなくなった時に最大1年6ヶ月、給与の約2/3が支払われる制度)が使えるようになる。
ただ、これを「お得」と感じるかどうかは個人の状況次第だ。今すでに配偶者の扶養に入っていて国民健康保険の保険料を払っていない人にとっては、社保加入でコストが純増する。一方、国民健康保険に独自加入している人は、社保加入で保険料が下がるケースもある。
とにかく「自分がどのケースに当てはまるか」を正確に把握することが大事だ。
2026年10月までに確認すべき3つのアクション
| アクション | 確認内容 | 期限 |
|---|---|---|
| ①勤務時間を確認する | 現在の副業・パート先での週の所定労働時間が20時間以上かを確認 | 今すぐ |
| ②雇用形態と企業規模を確認する | 副業先・パート先が法人かつ従業員51人以上かを確認 | 今すぐ |
| ③手取りのシミュレーションをする | 社保加入後の手取り額・年金増加額を試算し、働き方を見直すか判断する | 2026年9月末まで |
社保加入を避けたいなら「週20時間未満」に調整する
どうしても社保加入を避けたいなら、週の所定労働時間を20時間未満に抑えることが唯一の方法になる。10月以降は月収での調整が効かないからだ。
ただし「週20時間未満に抑える=収入が減る」ことを意味する。扶養内に収めることを優先するか、社保加入して将来の年金を増やすかは、ライフプランを踏まえて判断してほしい。
企業規模の段階的拡大にも注意
今回の10月改正では対象企業が「51人以上」のままだが、今後は段階的に拡大される予定だ。
- 2027年10月:従業員36人以上
- 2029年10月:21人以上
- 2032年10月:11人以上
- 2035年10月:10人以下
今は従業員50人以下の小さな会社でパートをしている人でも、数年後には対象になる。長期的な働き方を設計している人は、このロードマップを頭に入れておくといい。
「年収の壁178万円」との混同に注意
2026年から「年収の壁が178万円になった」という話を聞いた人もいるだろう。これは所得税の話であり、社会保険とは別の制度だ。
2026年1月から、給与所得控除と基礎控除の拡大により、年収178万円以下なら所得税がかからなくなった。これは働く人への恩恵だが、社会保険の加入ルールとは全く別の話だ。
📌 補足:手取りが増えるのは「毎月」ではなく「12月」です(2026年9月16日追記)
この178万円は、給与所得控除の最低保障額が74万円(改正前65万円)、基礎控除が最大104万円(合計所得132万円以下の場合)に引き上げられた結果です。合計すると178万円になります。
ただし、人を雇う側として知っておきたいのは「いつ効くか」です。国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」には、この改正が令和8年12月1日に施行され、「令和8年11月までの給与等の源泉徴収事務に変更は生じません」と明記されています。毎月の給与から天引きする源泉所得税は11月まで改正前の税額表のままで、12月の年末調整でまとめて精算する流れです。
つまりパート・アルバイトの方から「178万円まで非課税になったのに、毎月の天引きが変わらない」と聞かれても、それが正しい状態です。差額は12月に精算されます。事前に一言伝えておくと、余計な問い合わせを防げます。
あわせて扶養親族等の所得要件も緩和され、給与収入だけの場合の基準が123万円以下から136万円以下になりました。ただし新たに要件を満たすことになった親族について扶養控除を受けるには、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」等の提出が必要です(自動では適用されません)。
出典:国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/nencho2026/01.htm(2026年9月16日確認)
整理すると:
| 制度 | 内容 | 2026年の変更 |
|---|---|---|
| 所得税の壁 | 年収いくらから所得税がかかるか | 160万円→178万円に引き上げ(恩恵) |
| 社会保険の壁 | いくら稼いだら社保加入になるか | 106万円要件(月収)が撤廃(影響あり) |
| 扶養の壁(130万円) | 配偶者の扶養に入れるライン | 大きな変更なし |
「178万円まで働けるようになった」と思っていたら、社会保険の問題が別で発生していた——というケースが増えそうだ。両方セットで理解しておこう。
📝 れんの視点
フランチャイズ店舗を運営する経営者として、この改正は他人事ではない。パート・アルバイトの労働時間を「週20時間未満」に抑えて社保加入を避ける、という調整をしている事業者は多いはずだが、月収要件が撤廃される10月以降はその発想自体が通用しなくなる。人件費(社会保険料の会社負担分)が増える前提でシフトを組み直す必要がある——これは経営者側が今から準備すべき論点でもある。
従業員を初めて雇う際は、106万円の壁以外にも複数の手続きが必要です。初めて社員を雇う前に知っておくべきことで全体像を整理しています。
経営者向け:社保加入で増える人件費を補う「キャリアアップ助成金」
ここまでは働く側の視点で書いてきたが、雇う側(経営者)にとっても対応策がある。厚生労働省は、短時間労働者を新たに社会保険に加入させ、あわせて収入増加の取り組み(労働時間の延長や賃上げなど)を行った事業主に対して助成する「キャリアアップ助成金(短時間労働者労働時間延長支援コース)」を新設した。労働者1人につき最大75万円が助成される。人手不足解消と処遇改善を同時に進められる制度なので、106万円の壁撤廃で人件費増を懸念している経営者は、対象になるか確認する価値がある。
なお、従来の「社会保険適用時処遇改善コース」は2026年3月31日までに取り組みを開始した事業主が対象で、2026年4月1日以降に取り組みを始める場合は「短時間労働者労働時間延長支援コース」を利用する形に整理されている。詳細な要件は厚生労働省の公式サイトで確認してほしい。
まとめ|3ステップで10月前に動こう
2026年10月は働き方に関わる制度の大転換点だ。「106万円以内に抑えていれば大丈夫」という常識が、あと3ヶ月で通用しなくなる。
- STEP 1:副業・パート先で週何時間働いているかを今すぐ正確に確認する
- STEP 2:社保加入になった場合の手取り変化を試算し、「加入して働く」か「20時間未満に抑える」かを判断する
- STEP 3:雇用主・人事担当に10月以降の対応方針を確認し、必要なら9月中に働き方を調整する
社会保険は老後の年金や病気になったときの保障につながるものだ。「損か得か」だけでなく、自分の将来設計とセットで判断することを強くすすめる。あくまで本記事は参考情報であり、具体的な判断は社労士・税理士に相談することをおすすめする。
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